BAJAカリフォルニアは北緯約32度から22度に伸びる細長い半島だ。
世界地図を見てみると、その付け根から突端までは、概ね鹿児島から南西諸島を通り台湾までとほぼ同じ緯度となる。
偉大なる草レースBAJA1000のゴール地点であるLa Pazから、80kmほど下った芸術の町Todos Santosは、ちょうど北回帰線上に位置し、それよりも南は熱帯に属する。熱帯といっても、地理の分類上、半島の先っぽが属するだけで、うっそうとしたジャングルがあるわけではないが、ランズエンドと呼ばれる最南端のリゾート地カボサンルカスでは、冬でも海で泳ぐことが出来る、いわゆる常夏だ。

本州ほどの長さがあるバハカリフォルニア半島では当然地域差があるが、平均気温はだいたい20℃前後だ。1日の平均気温も冬で15℃程度、夏で30℃ほど、最高気温は35℃位になる。
昨今の日本では、地球温暖化の影響か、エルニーニョの仕業か異常気象といわれ最高気温が35℃なんて日も珍しくないようだが、日本の35℃とバハカリフォルニアの35℃の感じ方は、あきらかに違う。湿度の差は歴然で、バハにおいては乾燥した空気をはっきりと感じることができる。汗をかいてもシャツが湿ることがないのだ。メキシコの人々が炭酸飲料を好む理由がわかる気がする。

最も気温が上がる場所はやはり中央の砂漠地帯だ。15mにも達する巨大なサボテンが林立する砂の大地では夏の最高気温は45℃にも達する。
北緯28℃線上の町Guerrero Negroは、北バハカリフォルニア州と南バハカリフォルニア州の州境の町としても有名だが、日本でも塩の生産地として知られている。ある日本の商社が大規模な塩田開発を進めようとして、自然保護団体などの反対を受け中止したことなど、一時新聞紙面でも取り上げられた。大きな湾となっている沿岸部は遠浅で、その干潟は天然の塩田となっているのだ。地形も関係するが、それだけ強い日差しと乾燥した風を受けているということだろう。

BAJA1000のレースが行われるのは11月の中旬なので、日本では通勤ライダーが冬物のジャケットを本格的に着込む季節であるが、バハでは、日中はTシャツに短パンで十分だ。ただし、いくら熱砂の大地と言えども冬季の夜はさすがに冷え込む。内陸は砂漠性の気候のため、1日の温度差が激しく10℃ほどまで気温が下がることがある。
ノンストップで半島1600kmを縦断するそのレースでは、必ず1度夜を経験することになるが、それこそ中綿入りのジャケットが欲しくなるほどだ。ただ、レースとなれば、参加するライダーは寒さなんか感じずにひたすらゴールを目指す。
バハの暑さは気候だけでなく、陽気なメキシカン同様、ライダー達の心も熱かったのだ・・・。

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