昔、TV番組で「世界の子供達」(?)というのがあったが、世界各地のごく普通の子供や、一芸に秀でたスーパーキッズたちの生活を紹介するほのぼのとした番組であった。
学校までの送り迎えは車で、家に帰れば楽器やスポーツの習い事をする子供であったり、貧しい暮らしの中で家事を手伝う子供たちであったりと、生活環境は違うが、屈託のない笑顔は世界共通だということを教えられた。
バハカリフォルニアの子供達もみな幸せそうな顔をしている。半島を縦断するメインルートの国道からはずれ、舗装されていない砂とサボテンの道を数十kmも走った先にある小さな村にも学校があったりして、ちゃんとしたコミュニティーが形成されている。そんな素朴な土地の子供たちこそ本当の笑顔をかえしてくれる。

バハカリフォルニアでは、年間を通していくつかレースが開催されていて、また、オフロードツアーなども多数行われている。その中でも最も大きなイベントであるBAJA1000マイルレースのスタート地、ゴール地では、毎回お祭り騒ぎになる。
ライダーは、プロだろうがアマチュアだろうが、子供たちには皆ヒーローである。サインを求められ、ひらがなで「あいうえお」と書いても彼らには宝物なのだ。

オフロード天国といえる環境で、ライダーを見かける機会が少なくないからか、バイクを見れば両腕を前に、ハンドルを持ち上げるジェスチャーで「ウィリーしろ」とせがんでくる。こちらも調子に乗ってフロントアップで子供たちの前を駆け抜けると拍手喝采で出迎えてくれる。コース途中の娯楽が少ない小さな村では、それこそ年に一度のお祭りなのだろう。
ただし、子ども達と目が合ったら最後、「ステッカー、ステッカー!」と口々に叫びながら1人が2人、2人が4人と、あっという間に囲まれてしまう。はじめは、チームや、スポンサーのステッカーを1人1枚ずつ配ったりするが、終いには、まとめて「みんなで分けろ」って感じになってくるくらいだ。
片言のスペイン語で「お名前は?」なんて聞いたら、こちらが理解していなくてもお構いなしに、スペイン語で質問の機関砲である。そんなときは、5円玉を見せて話(?)をそらす。穴のあいたコインは珍しいらしく、騒いでいた子供たちもおとなしくなる。とはいっても、長くはつづかないが・・・。

また、少し悲しい現実だが、貧しい暮らしは残っているようで、子供にガムやキャンディーを持たせ、観光客に売りに行かせる親もいるようだ。買ってあげていいのか悪いのか困ってしまうが、そんなときこそペソと一緒に5円玉を出してあげる。
バハカリフォルニアを訪れる際は、ステッカーと5円玉は、いっぱい持っていこう。名前や歳を聞く事ぐらいしかスペイン語を話すことが出来なくても、たくさんの笑顔を見ることができるから。

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