バハカリフォルニア半島は、その付け根から突端まで、日本列島の本州ほどの大きさである。この距離の間に一本だけ南北を貫く国道、メキシカンハイウェイ1(MEX1)が走っている。ハイウェイとはいっても、そのほとんどが中央分離帯もない荒野の中を走る片側1車線の道である。
90年代前半までは、いたるところに大きな穴があいていて、半島の付け根の街エンセナダから先端の街カボサンルカスまでおよそ1600kmのほとんど全てがガタガタ道といった感じであった。
中央線も薄れ、特に大きなトラックとすれ違うときなどは、止まるような速度までスピードを落とし、路肩に落ちないようにギリギリまで寄せて走行しなければならなかった。
しかし、‘90年半ばからは路面補修が行われ、特にここ数年は、アメリカ経済の好景気のおかけで、メキシコの財政状態も良いようで、バハでも道路や道路施設の整備が進んでいる。舗装路面も滑らかになり、中央線にはいわゆるキャッツアイと呼ばれる反射板が埋め込まれ夜間でも走行しやすくなった。

ロードサイン、道路標識は的確に設置されていて、「この先15kmカーブ注意」、「霧に注意」とか「家畜注意」などの注意表示や「ポイ捨て禁止」というのもある。日本では「たぬき注意」とか「うし注意」の表示があっても実際にたぬきや牛を見かけることは少ないが、バハではまったくその表示の通り、本当に注意しながら走行しなければならない。
特に夜間走行をしていると注意表示通りのことが起こるから気が抜けない。霧で前が見えないとか、カーブを曲がりきって先が見えたとたん道路の真中に黒い塊がいくつも転がっていると思ったら牛だったとか、「この先強風注意」の看板が風でぶるぶる震えていたとか。
黄色地に黒のマークの注意表示の他に、文字でかかれた注意看板もあり、通りすぎる看板を一瞬で読むのはなかなか難しいが、辞書やスペイン語会話の本を片手に次はどんな“アトラクション”が待ちうけているのか想像するのも面白いかもしれない。

バハカリフォルニアには半島縦断の国道1号線の他に主要な街をつなぐいくつかの舗装路が通っている。
MEX2、3、5、19、22そして南、北バハカリフォルニア州の州道が数本ずつだ。
また、MEX1号、2号には、有料の高速道路がほぼ平行して走っている。それぞれ料金所が数カ所ずつ設置されていてキャンピングカーサイズで1区間40ペソ(4ドル)の通行料だ。
いずれも補修工事が進み、1号線同様に以前よりは大変走りやすくなったが、なかには穴ぼこだらけの道もある。たとえば、シウダ・インスルヘンテスから、ラ・プリシマという街をつなぐ南の州道「BCS53号」は、いまだにガタガタである。‘80年後半の地図では未舗装だったので、はじめの舗装工事から、おそらく10年〜15年は経っているはずだ。はっきりとはわからないが、その間ほとんど補修工事は行われていないのだろう。
 予算がないのか、やる気がないのか知らないけれど、いずれにしても実際にその土地で生活している人々には申し訳ないが、それがバハらしいところだし、オフロードライダーとしては、どこかの国のように舗装区間がこれ以上増えない事を祈るばかりだ。

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