バハカリフォルニア半島は大部分が砂とサボテンの大地である。この乾燥した土地では大型の野生動物はいないが、かわいらしかったり、ちょっと怖かったり、ユーモラスな生き物たちが、たくましく生きている。
昼間はあまり見ることが出来ないが、日が暮れてからバハの道を走行していると道路に出てくる動物たちの姿を見ることが出来る。

最も出会う機会が多いのがねずみだ。体長10cm位の黒褐色のかわいいやつだ。ねずみは、道路の脇から飛び出してきて反対側へ一直線に横切る。かなりのスピードで駆け抜けるので、ブレーキをかけなくても踏んでしまうことはない。
次に多いのがウサギだ。バックスバニーみたいな、グレー1色ではなく茶色とグレーが混じった色をしている。ウサギは明るいほうに向かう習性があるようで、道路沿いのブッシュから、車のヘッドライトに照らされた道路上に飛び出してくる。ねずみの様に横切るのではなく、ピョンピョンと来た後に路上で一瞬立ち止まるので、運転しているほうはどちらによけるか迷ってしまう。もちろんブレーキをかけるけれども、間に合いそうにないのでハンドルを切るが、引き返すか、そのまま進むか、分からないので賭けのようなものだ。

ユーモラスな動物といえばロードランナーだ。和名ではそのまま直訳のミチバシリ。
バックスバニー同様、ワーナーブラザーズのアニメに登場する「ビービーッ」って云いながら走っていくあの鳥だ。実際には車のクラクションのような鳴き声ではなく、鳩のように「クックー」って鳴くみたいだが、走る速さはマンガのとおり。ちゃんと羽もあり飛べるのだけど、羽は長い尾っぽと共に、急な方向転換時の舵取りの役目に使い、もっぱら地面を走っている。
そして、そのロードランナーを追いかける役のコヨーテも、稀に見ることが出来る。警戒心が強く、頭がいいので道に出てくることは少ない。BAJA1000の夜間走行時に国道から離れた荒野の中のセクションで、見かけることがある。

メキシコ人の犬好きは有名だが、街でもサボテン林の中でも本当に多く犬を良く見かける。たいてい人に慣れていて、食べ物をねだりに来たりするので、野良犬なのか飼い犬なのか区別がつかない。
最近あるテレビでオーストラリアの変わった法律を紹介していた。それは、犬に車を追いかけさせると罰金というものだった。運転手が驚いて事故を起こす確率が上がるからだという。
BAJA1000のレース中も地元メキシカンの観戦者が連れてきたであろう犬に追いかけられることがあるが、まさにそんな気分で、前後に他のライダーの気配もなく、荒野の中を1人で走っている感覚でいるところに突然「ワンワン」と、バイクめがけて迫ってくると、「いつもより、よけいにアクセル開けてます〜。」って感じになってしまう。
BAJA1000出場ライダーが、夜間走行時に1度は経験するどっきりだ。

どっきりと言えば、牛、馬、ロバ。もちろん野生ではなく、放牧されているものだけれど、柵や囲が、しっかりしていないので、そのへんを徘徊している。
国道走行時に道の真中に寝そべっていて驚かされたり、2000年に開催されたBAJA2000のレース中には、視界が土埃で遮られるので、先行車両がいるのだろうと思いながら走っていたら、レースコース上を馬が走っていたということもあった。
その他、砂漠を代表する生き物にタランチュラやガラガラヘビなどいるが、そんな怖そうな動物にはあまり出会いたくない。
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