バハカリフォルニアは、狭いところで幅が100km程で南北に約1700kmの世界最長の半島だ。
日本と同様に海岸線が長く、人々の生活も海の恵み無しでは成り立たない。大きな街は、天然の港を中心に発達してきたが、それも豊かな海があったからこそである。
近年は、その未開ともいえる自然を売り物に、マリンスポーツを楽しめるリゾートして注目を集めているが、実際に海で生きる動物たちを、身近に見かけることが出来る。

バハカリフォルニアでの海洋生物の代表格は、やはりクジラであろう。
12月から3月にかけて、コククジラが子育てのために遥か北の海から1万数千キロの旅をして、暖かく静かなバハカリフォルニア周辺の海域へやってくる。約3ヶ月の長旅の後、半島各所の静かな入り江で出産し、子育てを行う。
日本でも最近流行のエコツアーなどでも、ホエールウォッチングツアーでバハカリフォルニアへの企画を目にすることが多いが、世界的にみても貴重なクジラの楽園だ。

リゾート地として開発が進められている半島最南端の街、カボ・サンルーカスは、カジキマグロなどのビッグフィッシュを狙うことが出来るゲームフィッシングやダイビングのスポットとして有名だ。
コルテス海と太平洋がぶつかるその岬の突端には、奇岩が林立する岩場が広がり、魚たちの棲家となっている。
船底がガラス張りで海中を見ることが出来る観光船、グラスボートで、岬の周辺をぐるっと廻ると、餌付けをするまでもなく、数多くの魚を見ることができる。
また、豊富な獲物を容易に得られるからか、アラスカからアメリカ西海岸を経て流れてくる寒流に乗ってこの岬までやってくるカリフォフニアアシカたちは、岩場の上で日光浴をしていて、観光船が近づいても平然としている。逃げないばかりか、グラスボートから「オーッ、オーッ」と鳴き声をまねると、彼らはそれに応えて「オーッ、オーッ」と返してくれるサービスも忘れない

海中生物ではないが、海を生活の場としている鳥たちも良く目にする。
バハの海鳥で印象的なのはペリカンだ。動物園で見かけるモモイロペリカンではなく、カッショクペリカンだが、彼らのえさの摂り方は、そのユーモラスな風体からは想像も出来ないほど勇壮なものだ。イワシなどの小魚の群れを上空で旋回しながら狙いを定めると、1m50cmもあろうかという大きな羽を折りたたみ急降下する。
そして、着水の直前には水の抵抗を避けるために後ろ手を組む様に背中で羽を交差させ、大きなくちばしから魚の群れに突っ込み、海水と共にすくいとる。それが、1羽だけでなく10羽ほどのペリカンが次から次へと、まるで集中砲火のように炸裂するのだ。

砂とサボテンしかない、乾燥した不毛の大地という印象の強い内陸部とは対照的に、海の中や沿岸部は生命に満ち溢れている。
砂漠と海、静寂と活気。バハカリフォルニアは不思議の半島だ。
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