よく、メキシコの警察は腐敗していると言われるが、政治がらみの汚職事件、大掛かりな贈収賄や誘拐事件に関わっていたなど報じられていても実際に身近に感じられる事はない。
しかし、旅人は、少なからず警察のご厄介になることがある。そんなときに「そでの下」とでも言おうか、こちらもわかってはいるが素直に支払ってしまう場面に遭遇する。
なれない土地での車の移動中に交通違反の取り締まりを受け、お金を要求されることが最も多いだろう。

アメリカでは対面の信号機が赤でも禁止表示がなければ右折が可能だが、メキシコでは基本的にだめな様だ。ついアメリカの感覚で右折したことがあったが、すかさずPOLICIAと書かれたパトカーが現れて、停車を命じられた。スペイン語は話せるか、英語はどうだ、信号無視だ、免許証を見せろ、どこから来た、パスポートを見せろと矢継ぎ早に捲くし立てる。
こちらが、スペイン語は分からない、英語も「ジャスト・ア・リトル」といったフリをしていると、身振り手振りを加えた英語で、大体皆同じことを決まった様に言ってくる。
「明日の午前中までに隣町の警察署に出頭しなさい。」「今ナンバーを控えたからそのまま出国は出来ない。」
「でも、明日出頭できなくても心配しなくて大丈夫。いまここで40ドル払えば、私が明日手続きしておく・・・・。」 「ここに封筒があるから、40ドルを入れたら、舌で舐めて封をしなさい。そしてサインをしておしまいだ。」
ただ、旅人としては、ありがたい。もし、本当に、わからなかったとはいえ道路交通法なりを犯したと思われる状況で、その場の解決で済むなら、理不尽な要求でなければ、時間的にもよしとするのが正解かもしれない。

バハカリフォルニアを含めてメキシコでは、ピストルと麻薬は違法だ。
銃社会のアメリカと地続きなので、国境付近には「メキシコでは拳銃所持は違法です」と書かれたロードサインを見ることが出来る。
バハカリフォルニア半島を南北に貫く国道1号線を走ると、その1600kmほどの行程中に大きな街の入り口など数カ所検問がある。ミリタリーチェックポイントと表示されているように、軍が銃火器、麻薬の検問を行っているのだ。
自動小銃を抱えた兵士が通過する車両1台1台をチェックするのだが、BAJA1000参戦の日本人チームが良く使用するキャンピングカーでは、その兵士達が乗りこみキャンピングカー備え付けの冷蔵庫の中まで覗かれる。

当然、持ってちゃいけない物は持ってないし、悪いことをしているわけではないけれども鈍く光るアサルトライフルを見るとなぜか緊張してしまう。
そんなときは、丸覚えのスペイン語で、「ピストルもドラッグも持っていません。」「そしてお金も持っていません。」なんて言ってあげると、兵士達の顔もほころぶ。
たいがいは、20代そこそこの若者たちだ。なかには深夜の検問所で酒の匂いをさせて、レース関係者とわかると、Tシャツやステッカーをおねだりする兵士などもいて、とってもラテンな検問だ。
「テキーラはリュウゼツランから造るけど、日本の酒はお米から造ります。」と、これまた丸覚えのスペイン語で言いながら一緒にテキーラ飲んだりして・・・。

偉大なる草レースBAJA1000も警察、軍隊の協力で成り立っているし、みんな陽気で気さくなメキシカン達である。
メキシコそして、警官、兵士の名誉の為に付け加えさせてもらうと、もちろん、全ての警官、兵士が“合理的”な解決方法を実践しているわけではないけれど、合理的、アバウト、いろいろ言い方はあるが、万事がスムーズに流れるといった点では、いいシステムかな?
* 写真の人物は、本文内容とは関係ありません。
|