メキシコの音楽といえば、大きな帽子をかぶったヒゲのおじさんギターを弾いている光景を思い浮かべる人は多いと思うが、曲がどんなものかあまり聞いたことがないのでわからないという人も多いかもしれない。
「コンドルは飛んでいく」はペルーだし「サンバ」はブラジルであるので、間違わないように。音楽に国境はないといいますが・・・。

ロスアンゼルスから車で数時間、カーラジオのチューニングも変えずに南下していくと、サンディエゴを過ぎたあたりから同じ周波数で、別のラジオ曲の音が聞こえてくる。早口のスペイン語とラテンのリズムであきらかに今までの雰囲気と異なるもので、国境を超える前からいかにもメキシコって感じがしてくる。
そしてメキシコ入国の一仕事を終えて、目的地へ向かうレンタカーのラジオのチューニングを変えようとすると、アメリカでのポップス中心の選曲が懐かしくなるくらい一変してどこのラジオ曲もトランペットとギターとスペイン語になっていて軽いカルチャーショックを受ける。

メキシコをはじめラテンの国々ではそうであるのだろうが、音楽は生活の一部なのだと感じさせられる。
バハ1000などのレースで訪れても必ずメキシコの音楽に触れる機会がある。参加車両の車検は、観客も自由に入ることが出来る広場で行われるので、タコス屋さんなどの出店もあり、お祭り騒ぎで当然音楽がかかっているし、ライダースミーティングでは、アメリカ国歌とメキシコ国歌が水兵達によって演奏される。
また、レースを観戦するために集まってくる人達は、思い思いの場所でテーブルとイスを出し、タコスとビールでワイワイやりながら、必ずカーラジオやラジカセからは、大音響のラテンのリズムを流している。

ラジオや街頭で耳にするのはやはりポップス、サルサが多いが、最もメキシコらしい音楽はやはりマリアッチの演奏する民謡であろう。
マリアッチは、19世紀に、メキシコ西部のハリスコで生まれた、5〜10人ほどで構成される民族楽団である。つばの大きな帽子ソンブレロとボレロコートを身にまとい、ギター、ギタロン(低音のギター)、ビウエラ(小さな5弦ギター)、バイオリン、トランペットなどの楽器で演奏するメキシコの音楽と聞いてすぐ想像できるものだ。
マリアッチという名の由来にはいくつか説があるようだが、最も多く唱えられているものは、フランス語で結婚を意味する「マリア−ジュ」にその名前の由来があるという説だ。
一方では、ギターを造るのに使用した木のインディヘナ(先住民)語での呼び名から来ていると言う説。
また別の説では聖マリアのお祭りで演奏することからという説などがあるようだ。多くはレストランや結婚式などのパーティーの催し物でロマンティックなバラードやアップテンポの民族舞踊曲などが中心となるので、「マリア−ジュ」から来ているというのもうなずける。
インディヘナ(先住民)は笛や打楽器やホイッスルで愛の音楽、祭りの音楽を合奏していたようで、マリアッチで使用されるギターやバイオリンなどの弦楽器は元々スペイン人によってもたらされたものであり、インディヘナの音楽とマリアッチとの明確なつながりはない様だ。
しかし、スペインの征服以来、混血が進むのと同じようにスペイン系の民謡とインディヘナの音楽も交じり合って現在のメキシコ音楽が出来あがっている。
バハカリフォルニアで本格的なマリアッチの演奏を聞くには、高級レストランなどにいかなければならないが、観光地のレストランのオープンテラスで食事をしていると流しのマリアッチ風オジサン達が1曲いくらで演奏してくれる。
彼らが演奏する曲で多いのは、皆が良く知っている「ベサメムーチョ」や「ラ・バンバ」や「ラクカラチャ」などメキシコ各地の民謡などだ。
いくら払って良いのかわからなければ聞けば良いし、高ければ値切ってみるのも良いだろう。たいてい$5ぐらいで演奏してくれるはずだ。「ラ・バンバ」やサッカーの応援「オーレオレオレオレ」で有名な「カミーノ・デ・ミショアカン」がおすすめ。 ビバ!
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