メキシコの人々は、犬好きである。ネコ派より、断然イヌ派の方が多いようだ。
BAJAでは、日本の都会でよく見る野良猫のようにネコを見かけることは少ない。もともと少ないのか、飼っている人が少ないのか?たまに猫を見かけて、しかも黒猫が前を横切ろうものなら、それこそ珍しいことだ。不吉なことが本当に起こるのではと、思わず3歩さがってしまう。

古代アステカの時代から宗教的な動物としても犬との関わりは強かったのだろう。番犬としてあるいは猟犬として、生活に欠かせない動物であったことは壁画や遺跡などからもうかがえる。最近CMで人気のチワワは、メキシコ・チワワ州原産の犬だ。アステカの人々が愛玩用あるいは、神に仕える動物として飼っていたのだろう。

スペイン語で犬は「ペロ」。ペロペロするから「ペロ」かどうかは、知らないが、BAJAで出会う犬達は皆愛想よく、誰にでもしっぽを振ってくる。気の弱い子は、手を出しただけでお腹を見せたりする。
BAJAでは本当に多くの犬と出会う。犬が多いのかサボテンが多いのか、BAJAの犬は、歩けばサボテンにあたると言われる?ほどだ。たいていは首輪をしていないが、野良犬かと思うとどうやらそうでもないらしい。
街中でも、サボテン林が広がる荒野の牧場でも、人を見ると「遊んでちょうだい」、「何か美味しいものちょうだい」といった状態だ。もっとも、野良でも人になれているから区別はつかないが。
また、たまに首輪をしていてもつながれていることはない。あたりまえかもしれないが、番犬として飼わ0れている犬のほうが、鎖でつながれていて良く吠える。
高さ10数メートルに達する巨大なサグアロサボテンが林立する半島中央部の荒野の真中で、撮影のためにキャンピングカーを止め、バイクを降ろし準備をしていると、どこからともなく子犬が現れた。まだ乳離れしていないくらいの目がクリクリしたワンちゃんだ。
親がどこかに隠れているのか、はぐれたのか、あたりに親犬らしき姿はない。近くに民家はなく、牧場の柵だけが、わずかに人との接点を示しているだけだ。飼い犬なのか、野良犬なのか本当にわからない。
思わず抱きかかえて頬ずりすると、放しても後を追いかけてくる。きっとお腹がすいているんだろうと、キャンピングカーの冷蔵庫からミルクを出し、紙皿に注ぎ与えると、「ペロペロ」一気に飲み干した。3杯は飲んだろうか、もうお腹いっぱいだろうと、サボテンの下で、バイバイと言って車に向かうが、やっぱりついてきてしまう。しまいには、キャンピングカーの入り口にあるステップを何とかよじ登り、車の中まで入ってきてしまった。

本当に親とはぐれてしまったのかと心配にはなったが、連れて帰るわけにもいかず、ダンボール箱にビスケットと紙皿に注いだミルクを置き、そちらに気をとられてるスキにキャンピングカーを走らせた。
あのワンコも、今は立派なペロになっていることだろう。きっと、そうであってほしい・・・。
今年はワンダフルな年でありますように。
|