バハカリフォルニアは「悪魔の半島」あるいは「天に見放された半島」とも呼ばれる。乾燥した大地で作物は育たない。延々と広がるサボテンと砂の世界で、人は暮らしていけない。
ただ、そんな不毛の大地ではあるが、半島中央部を貫く山脈周辺にはわずかな緑がある。また山脈に降った雨水は、か細い流れだが川となり、干上がった大地をわずかに潤している。先住民達はこのような砂漠のオアシス、そして河口周辺を生活の拠点として生きてきたのだ。
本州よりは少し小さいとはいえ、2000kmほどもある半島に街と呼べる街は数えるしかない。それ以外は砂とサボテンが支配する世界だ。この過酷な条件の中で暮らす人々は自然の偉大さを感じながら生活しているのだろう。

メキシコの人のほとんどを占めるメスチーソは、スペイン人の征服によりラテン系白人と先住民インディヘナあるいは複数の民の混血により誕生した民族である。
構成は、スペイン系の白人10%、先住民インディへナと白人の混血であるメスチーソ80%、インディヘナ10%。ほどとなる。
残念ながら、貧富の差も、白人が富と権力を握り、貧困層は、征服から逃れてひっそり暮らしてきた人々と云うことになる。バハカリフォルニアのリゾート地でも観光客相手に民芸品を売るインディヘナを多くみかける。
全人口の約8%ほどは、日常は古代からの言語を話す先住民だという。もちろん現代はスペイン語も話すが、なかには、教育を受けていない人々もいるようだ。もっとも、狭い日本でもお国訛りがあるし、広大な国土のメキシコでは各部族の言葉が幾つもあって不思議ではない。

ラテンアメリカの民族メキシコ人といえば、陽気な民族で知られるが、あくせくせず、よく言われるように時間に対してもおおらかで、約束の時間に1〜2時間遅れてくるのはあたりまえ、待つほうも気にしないといった感じのようだ。そんな性格だからこそだろうか、質素な生活でも人生を楽しんでいるというのがよくわかる。
さらに陽気で、明るく、誰に対しても友好的である。歩いているだけで「アミーゴ!」と声をかけられる。まあ、この場合は呼び込みが多いが、困っている時などは特に、親身になって助けてくれる。
砂漠の真中の1本道でバイクを止めていると休んでいると、必ず通りかかった人は車を止め、「困っていないか?」と聞いてきて、休んでいるだけだと言っても「水はあるか?」、「ブリトー食べるか?」と言った具合だ。

「様々な人種で構成された民族だから誰に対してもやさしいんだよ。」とは、荒野の中でたまたま出会ったメキシカンの言葉だが、「困ったときはお互いさま」は、国民性だけでなく、厳しい大自然の中で暮らす彼らのあたりまえの行動なのだ。
砂とサボテンの支配する過酷な地で生きるバハの人々は、決して天に見放されることはないだろう。
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