メキシコは、世界でも有数のコーヒー産地である。もっとも、砂漠性気候のバハ・カリフォルニアで、コーヒーは育たないが、南部の州で主に生産されている。
また、有機栽培コーヒーの輸出量は、世界1位とのことで、日本でも、この有機コーヒーのフェアトレードが盛んに行われている。
メキシコでは、中南米のような、森林を伐採して切り開いたプランテーションでの生産ではなく、先住民族たちがジャングルの中で森を残したまま、農薬や化学肥料を使わずに生産していて、コーヒーだけではなく、その他多品目の作物を栽培しているので、安定した収穫が得られるそうだ。
ただ、中南米に比べれば劣るものの、世界第4位の生産量を誇るメキシコの、レストランや、屋台でのコーヒー事情はあまりよろしくない。
生産されたコーヒー豆は、地元では少量流通されるようだが、そのほとんどが日本をはじめとする海外に輸出され、一般には出まわらないのだ。

バハに限らず、メキシコでは、国道沿いの小さなレストランなどでコーヒーをオーダーすると、マグカップや、発泡スチロール製のカップに入ったお湯と、ネスカフェのインスタントコーヒーが出てくる。もちろんミルクもコーヒークリーマーだ。なかには、メニューにそのまま「ネスカフェ」と書かれている所さえある。
また、少しましなお店でも、ポットに入ったインスタントコーヒーをテーブルに置いてあったり、高級なレストランでも朝食時にはアメリカのファミリーレストランのように席に、着くなり「カフェ?」とたずねられ、薄いアメリカンコーヒーをなみなみと注がれる。
さらに、「カフェ・オ・レ」はスペイン語では「カフェ・コン・レチェ」、つまり「コーヒー・ウィズ・ミルク」なわけではあるが、まさにコーヒーとグラスに入った牛乳が出されると、ちょっと困惑する。
バハでうまいコーヒーが飲みたければメニューのコーヒーの欄にカプチーノやエスプレッソと、幾つかの選択肢がある高級レストランやイタリアンレストランに行かなければならなかったが、最近は、日本と同様、スターバックス・コーヒーの影響で、各地にカフェができて、街にいればコーヒーで苦労する事は少なくなった。
バハ・カリフォルニア州にはまだないようだが、メキシコ国内で100件ほどスターバックスがある。バハの玄関口、エンセナダには、「スタバの豆を使用しています」と表示しているシアトル風?カフェや、半島最南端のリゾート地、カボ・サンルーカスには、お決まりの二重丸のロゴマークを真似た、カボ・コーヒーというのもある。
小さな街ではまだまだネスカフェだけれど、ここメキシコ・バハでも世界的なトレンドにのってアメリカ的からヨーロッパ的なコーヒーに変わってきたようだ。
以前は、缶コーヒーや、アイスコーヒーが飲みたくても飲めなかったが、ガソリンスタンドしかないような、砂漠の真中のミニストアでも、スターバックスのビン入りキャラメルマキアートが冷えていたりと、喜んでいる日本人も少なくないだろう。
まあ、そうは言っても、ぴりりとサルサの利いたタコスには、コーヒーよりもやっぱり冷たいビールが一番だけど。
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