オフロード天国と呼ばれるバハ・カリフォルニア。
しかし、バハの街でオートバイを見かけることは少ない。アメリカと同様に広大な国土を持ち、そしてラテンアメリカの優等生といわれるメキシコに於いての移動交通手段はやはり、圧倒的に車である。
バハのそれぞれの街自体は比較的小規模ではあるが、それでも車がシティコミューターの中心となっている。
バハで見かけるオートバイは、ツアーで使用されるトラックに積まれたオフロードバイクか、半島縦断のロードツーリングに向かうツアラーバイク、そして観光客相手のレンタルバイクで、日常の生活で使われているオートバイを見ることは稀である。
渋谷道玄坂にずらりと停められたスクーターの列や、ホーチミンの通勤カブの波のような光景は、バハでは幻だ。

アメリカ国境に近いティファナや、エンセナダでは、ロードスポーツバイクに乗る若者の姿を見ることもあるが、たいがい街で見かけるオートバイは、ピザ屋さんの宅配など、リアキャリアに箱をつけた仕事で使っている車両ばかりである。
日本のように、通勤通学で使われたり、日常の「アシ」としての使われ方の車両は少ないようだ。Moto(モト)=オートバイは、もっぱらレジャーの乗り物なのだろう。

半島南端のリゾート地では、観光客が街中を散策できる小型のバイクや、スクーターをレンタルしているので、少ないながらも、バイクを見る機会はある。ただ、同型のレンタルバイクだから、サングラスにTシャツ短のパンで運転するライダーや、街に駐車しているバイクが「神経衰弱」のように、同じ車両に見えてしまうこともあるのだが。
また、ビーチでは、ATV(4輪バギー)のレンタルがあり、昔YAMAHAが造っていたTWのタイヤを更に太いタイヤにしたような、ビーチバイクBWも置いてあったりする。あるいは、大きな街の外れの河原に、モトクロスコースが造られている所もあり、モトクロッサーにまたがった、ジーパンにTシャツ姿のライダーを見かけることもある。

バイクの種類では、やはりビジネスユース車両が多い。はじめから箱が載せられるように1人乗りで大きなキャリアが付いている、CB系エンジン搭載のHONDA CG125 CARGO というバイクの利用率が高いようだ。あるいは、同系の2人乗りスポーツモデル。
さらに、メキシコホンダでは、カブも取り扱っている。もちろん新聞配達のお兄さんや、おそば屋さんが乗ってるような特別仕様は無いが、タンデムシートつきの90ccがメインのようだ。

バハのオフロードをツーリングしていて小さな村に入ると、休憩している我々を見つけ、どこからか古いオフロードバイクがやって来た。
近づいてきた、もちろんノーヘルのそのライダーの顔を見ると、あきらかに少年である。親父が乗らなくなったポンコツを遊び道具にしているのだろう。
道を尋ねると、そのモトでしばらく先導してくれた。少年は素手にノーへルだが、いいペースで砂埃を上げて我々を導いてくれた。
途中で彼のバイクのチェーンが外れるまでは、であるが。
|