メキシコでは、街に必ず3つの食べもの屋さんを見ることができる。食べ物屋さんで多いのはやっぱりタコスが1番。ついでよく見かけるのは、トルタスと屋台のホットドッグではないだろうか。
タコスは言わずもがな、メキシコを代表するナショナルフード、トルタスはメキシコ式サンドイッチ、ホットドッグは、いわゆるメキシカンドッグだ。いずれも、早い・安い・うまい庶民の味方なのだ。

もちろん本場だし、そのイメージもあるので、ついタコス屋さんに目がいくのかもしれないけれど、屋台や街の看板で多く見つけられるのは、意外とトルタス屋さんである。
トルタはコッペパンかフランスパンのような丸いパンに肉や野菜などの具をはさんだものだ。大きさはお店によって異なるが、基本的にボリュームたっぷりで、なかには途中でギブアップしそうなほどの1個で満腹、特盛サイズもある。
挟む具は、鶏肉、アボガド、トマト、タマネギ、チーズなどが一般的。専門店では好きな具をオーダーできるし、ほかのサンドイッチと一緒で、そのバリエーションは、無限大。
その他の具は、牛肉、豚肉、ソーセージ、チョリソ、カツレツや、レタス、キャベツの千切り等の野菜。それにケチャップとマスタードもお好みで。価格は、200円から500円ほどだ。
いずれの具を選んでも、アボガドとトマトが入ると、グッとトルタスらしくなる。メキシコっぽいってことだろうか?
そして、ハンバーガーのピクルスのような存在のチレ(とうがらし)もかかせない。酢漬けのハラペーニョの輪切りが2つ3つのっていれば、全ての調和がとれた最高のハーモニーだ。バンズも具も鉄板の上で調理したてのアツアツをほおばり、キンキンに冷えたコロナビールなぞで流し込む。
ボリュームたっぷりだけど、最後の一口まで、飽きることなくその幸せは続くのだ。

ホットドッグは、これまた本場のメキシカンドッグであるが、日本でのそれを想像すると別物に思えてしまう。ソーセージにサルサソースをかけただけのジャパニーズメキシカンドッグとは違うのである。
まず、大きな特徴は、ソーセージにベーコンが巻いてあることだ。そして、トマトとたまねぎを細かく刻んだフレッシュなサルサとサワークリームがかけられたもので、さらに、ピリッと辛いハラペーニョペッパーがやはりアクセント。屋台では、鉄板の上に何本ものベーコン巻きソーセージが焼かれ、その油でたまねぎなどが焼かれている。
オーダーすると、鉄板の下の保温ボックスからホットドックロールを取り出し、いい色のこげ目のついたベーコン巻きソーセージをトングの先で器用に挟んでから、「玉ねぎはいりますか?」「サルサソースは?サワークリームは?チレ(ハラペーニョ)は?」と聞かれる。いらない場合は、No(ノ=no)、あるいはsin(シン=without)〜、いる場合は、Si(シー=yes)、あるいは、con(コン=with)〜と言えばいい。
大抵、ハラペーニョも含めて、全部盛りを頼むことが多いので、con todo(コン・トド=with all)なんて注文する。

夕方の街角では、夕食をホットドックで済ませようという家族だろうか、10個以上の注文をする子供連れ客もいて、ソーセージの焼き上がり待ちで、屋台の前は行列ができる。
何分も待たされることもあるが、それもまた極上の調味料。ようやく自分のオーダーしたホットドックを手にして一口目を口に運べば、まさに至福のひと時。

トルタスもホットドッグもできたてが美味しいが、バハツーリングのときなどは、お昼のお弁当にアルミホイルで包んでもらってサボテン林の中で食べれば、お腹もこころもメキシコの太陽のようになれるのだ。
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