メキシコのお酒と言えば間違いなくテキーラだ。
テキーラは、竜舌蘭(リュウゼツラン)というアロエのお化けみたいな多肉植物を原料にした蒸留酒である。
150種類以上ある竜舌蘭の仲間のうち、130種類ほどがメキシコに自生しているそうだが、この竜舌蘭から造られた酒は、総称でメスカル (Mezcal) と呼ばれる。メキシコ各地で、それぞれの品種や製法により味わいの異なるメスカルが製造されている。
そして、そのメスカルの中で、テキーラ村とその周辺地域で、特定の竜舌蘭のみを使って、決められた製法で作られたもののみが、「テキーラ」として出荷される。

竜舌蘭は、元来、水分の多い植物であり、先住民達は、2mほどにも伸びたその葉をいくつか切り取り、中心部に穴をあけそこに溜まったこの樹液を古代から飲んでいた。
いまでも、アグア・ミエルといって水や清涼飲料の代わりに地元のひとに飲まれている。糖分を含んだその樹液を木の樽などに入れ、発酵させたものが、プルケ(Pulque)と呼ばれる、どぶろくのような、低アルコールのお酒だ。
メスカルは、もともと先住民が飲んでいたそのプルケをもとに、スペイン人たちが持ち込んだ蒸留技術で作られたものだが、バーボンやラム等と共に、融合の産物のひとつと言えよう。

竜舌蘭のみを原料とし、他の穀物などを使用していない、100%アガベ(Agave=竜舌蘭)と書かれたラベルが本物の証である。メスカルやテキーラのラベルや、キャップ、中にはボトルにも、竜舌蘭の絵や装飾が施されている。

日本でも有名なメスカルは、グサーノ・ロホ(Gusano Rojo)だろう。ビンの中に、芋虫が入ったメスカルだ。ハブ酒や、ハチ焼酎のような感じだ。
マゲイという竜舌蘭に寄生するゾウムシの一種である、グサーノの幼虫が1匹メスカルの中に入ったものだ。ラベルには、アガベ畑で水瓶を抱える赤い芋虫君が描かれている。
グサーノ・マゲイは、先住民の貴重な蛋白源として食べられていた虫で、蜂の子のように、ある地方では、今も多くの人に珍重されているようだ。
メスカルに入っている芋虫は、お酒を飲み干すときに、一緒に食べると、幸せになれるといわれている。
バハでメスカルの生産は、見られないが、観光が大きな産業のひとつになっているので、酒屋でなくても、お土産やさんにもメスカルが並んでいる。
小さなソンブレロの装飾が施された、10cm少々の小さなボトルのメスカルは、お土産に最高だ。
バハを訪れたら、芋虫入りのメスカルをお土産にいっぱい買って帰ろう。
たくさんの幸せが待っているに違いない。
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