日本での5月5日は、端午の節句で、こどもの日の祝日となるが、メキシコでもシンコ・デ・マヨの祝日である。スペイン語で、シンコ(cinco)は「5」、マヨ(Mayo)は「5月」なので、そのまんま5月5日のお祝いとなる。

1862年5月5日に、メキシコシティの東100kmほどにあるプエブラ州の州都プエブラで、イグナシオ・サラゴザ将軍率いる少数のメキシコ軍が、約2倍の軍勢のフランス軍に勝利したことを祝う日だ。
メキシコ軍を指揮した、サラゴサ将軍は500ペソ紙幣の肖像画となるほど英雄とされていることからも、5月5日が大切な日か知ることができる。
また、同様に紙幣の肖像画となっている、先住民族から選出された初のメキシコ大統領、「ベニート・フアレス」と共に、「サラゴサ」そして「シンコ・デ・マヨ」も、メキシコ各地で街の通りの名前にもなっている。
5日の当日、あるいは前後の週末にかけて、それぞれの街で、様々な催し物が行われる。
街の広場では、伝統的な踊りや、子供向けの寸劇が披露されたり、マリアッチが陽気な音楽を奏でる。
スペイン統治時代に作られた街並みは、基本的に教会を中心とした容になっている。街の中央に教会があり、その前にソカロと呼ばれる広場があるというパターンが多い。
そしてその広場で、街のイベントが行われる。先住民族の踊りから、即席の舞台で行われる、プエブラの戦いを題材にした劇等だ。
大人から子供まで広場に集まり、出店の食べ物、飲み物片手に楽しんでいる。

アメリカでも、特に、メキシコと国境を接する、カリフォルニア州のロスアンゼルスやサンディエゴを含む南カリフォルニアでは、ヒスパニック系住人も多いことから、シンコ・デ・マヨのお祝いが盛大に行われる。街ではパレードが行われ、学校やご近所などのコミニュティーでは、メキシコ料理を中心にパーティーが開かれる。
ちょうど日本人が、クリスマスやハロウィーンを本来の趣旨はさておきパーティーをする日としているかのように、メキシコ系アメリカ人以外の人も、この日はタコスにテキーラで盛り上がる。
ロサンゼルスでは、今年で20回目となる、フィエスタ・ブロードウェイが開催される。街の中心部が24ブロックも閉鎖され盛大に行われる、50万人以上が集まるというアメリカ最大のシンコ・デ・マヨのお祭だ。メキシコにルーツを持つ人たちの誇りとアメリカのコマーシャリズムが合わさり、本場メキシコより、盛大に行われる。

もっとも、ロスアンゼルス自体、もともとは、メキシコ領であったのだから当然といえば当然といえよう。
そして、サンディエゴやロスアンゼルスがある、現在のカリフォルニア州の辺りは、地理的に南、地図上の下に位置しているBAJA(下の意味)カリフォルニアに対して、地理的に北、上に位置するALTA(上)カリフォルニアと呼ばれていたのであるから。
1780年ころに、バハ・カリフォルニアから北上してきたメキシコ人たちが最初に住んだのが、現在のドジャーススタジアム近くのオルベラストリートという街で、ロスアンゼルス発祥の地として観光地となっている。
5月5日の意味を知らずにパーティーで盛り上がっている人の中には、9月16日のメキシコの独立記念日と勘違いしている人もいるようだが、日本人は、単純に5月5日というだけで、端午の節句と重ねしまう。街の広場で演じられる寸劇を観ている子供達に、新聞紙で折った兜でも頭にのせてあげたくなる。
今年のゴールデンウィークには、こいのぼりと菖蒲を眺めながら、コロナビールでも飲みましょうか。5月5日は、バハの節句。