「乾燥した不毛の大地」とも形容される、メキシコ・バハカリフォルニア。砂獏とサボテンの大地は、雨とは無縁の世界といってもいい。
世界最長の半島であるバハカリフォルニア半島は、北緯約32度から約22度まで、鹿児島から南西諸島を通り、台湾までとほぼ同じだ。
日本を含めた東アジアの同緯度での気候は、米が獲れるくらいの雨が降る、比較的降水量のある温帯気候だが、西アジアは、砂漠化が進む乾燥気候となっている。同様に、北アメリカ大陸の西側に位置するバハカリフォルニアは、乾燥気候の最も乾燥した砂漠気候となる。
メキシコ本土の北回帰線以南の土地は東南アジアのように雨季がある熱帯気候に属するが、乾燥気候のバハカリフォルニアには雨季がなく、降雨量は非常に少ない。バハカリフォルニア半島全体の年間降水量は、250〜300mm程度である。
日本でも各地の降水量が違うように、半島の沿岸部、中央の砂漠地帯、南北で異なるが、最も乾燥している砂漠地帯では年間降水量が100mmを下回るときもある。半島の北部BAJA1000のスタート地エンセナダで280mm、半島中央部の沿岸部で76〜100mm程度、中央の砂漠地帯では、ごくわずかの降水量となる。ちなみに、東京の年平均降水量は、1500mm程だ。

年間300日は、青天の日があるというが、少ないながらも雨は降っている。
半島の北半分では、あえて言うならば、冬が雨季といえる。北太平洋からの低気圧は、一般的に中程度の勢力の場合は、アメリカ・南カリフォルニアから、バハに達し、雨を降らせる。標高3000mを超える、バハの最高峰エンカンターダ山のある山脈では、山頂部に雪も積もる。
半島の南では、7月から10月中旬までは、チュバスコと呼ばれる時折雷雨を伴ったハリケーンが訪れる。南メキシコで発生したハリケーンが、北側を通ると、半島南端部が通り道となる。
半島南部の降水量のほとんどは、このハリケーンによるものだ。

冬の嵐や、ハリケーン以外の降水量は、秋の太平洋岸に海水温と気温の差で発生する霧と、強烈な日差しで熱せられた大地からの上昇気流で発生する積乱雲の雷を伴ったスコールだ。
秋の午前中は、暖かい海水に夜間冷やされた空気が触れると、アメリカ大陸西海岸全体を覆うほどの広い範囲で霧や低い雲が発生する。日が昇り、お昼ころになると、うそのように雲は切れ、天に届かんばかりの晴天となるが、それまでは、「カリフォルニアの青い空はどこ?」と言いたいくらい、どんよりした天気だ。
そして、局所的に発生する雷雲は、遠くから、「ここから雨です。」と、降っている場所をはっきりと確認することができる。
サボテンでは雨宿りできないし、貸してくれる軒下もないので、幸運にも?スコールに遭ってしまった場合は、雲の切れ間へ向けて一気に走り抜けるか、ずぶ濡れのままじっと待つしかない。
めったに降らない雨に遭うのは、やっぱり幸運だろう。普段はオンロードバイクでも走り回れるほどフラットで硬くしまった地面が延々と続く干上がった湖、ドライレイクが、みるみるうちに本来の「湖」へと姿を変えたり、サボテンのバックに架かった七色の虹を見ることができたりするのだから。
不意の雨も、旅人には気の利いた演出だ。
|