熱帯低気圧(トロピカルサイクロン)は、世界6箇所の熱帯の海で発生する。
発生した地域、大きさにより、サイクロン、タイフーン、ハリケーンなど、その呼び名が異なるが、北大西洋、北太平洋等で発生した強い熱帯低気圧が「ハリケーン」だ。
最大風速17.2メートル以上で台風になるのに対して、ハリケーンの場合は最大風速が33メートル以上にならないとハリケーンとは呼ばれないことからも、その威力が強力だということがわかる。
いずれも海面温度が27度以上といわれる、暖かい海水面から蒸発する水蒸気をエネルギー源として発達する。緯度にして、10度から20度の間のインド洋、太平洋、北大西洋の熱帯収束帯と呼ばれる海域が、発生海域となる。

バハ・カリフォルニアは北緯約32度から22度に伸びる半島だ。ちょうど、ハリケーンが発生し勢力を増し、北上する緯度にあたる。
数年に一度、ハリケーンシーズンの8月から10月にかけて、バハ・カリフォルニアは、ハリケーンが直撃し、被害を受けてきた。近年では、1997年に、半島突端部をハリケーンがかすめ、リゾート地のラ・パスやカボ・サンルカスの街に打撃を与えた。

そして、2009年9月、巨大なハリケーン「Jimena」(ヒメナ)が、バハ・カリフォルニア半島を直撃した。まさに半島を縦断するような進路で北上し、半島南部太平洋側の小さな村、San Carlosから上陸した。
そして、南北バハ・カリフォルニア州境付近、カリフォルニア湾側のオアシスの街Mulegeを通り過ぎ、カリフォルニア湾に抜け、さらにメキシコ本土に再上陸した。
Mulege(ムレヘ)の街のソカロ(中心部)は、高台になるが、ひとびとが暮らし、ホテル、キャンプ場などの施設が数多く並んでいた川沿いの建物は、ことごとく流され壊滅的な打撃を受けてしまった。
同じくカリフォルニア湾側のSanta Rosalia(サンタ・ロザリア) は南北を山に挟まれた谷に作られた小さな街だ。普段は枯れ沢だが細い川原が町の中心を通っている。通常の降雨では砂防施設など必要ないその川に大量の雨水が流れ込み、鉄砲水が起こり、街を飲み込んでしまった。
カリフォルニア湾に面する、きれいな白い砂浜が続くビーチ、サンラファエルに一人で住んでいるパンチョさんは、ハリケーンの直撃は逃れ、テレビアンテナが折れただけで済んだ、と話してくれた。
さらに続けて、雨は少なかったが、風が強く、砂浜にウミガメが大量に打ち揚げられていた。そして卵も全滅だろう。でもこれが自然だと。
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