バハ・カリフォルニア半島のほとんどは荒野で、都市部を除いて未舗装の道が多い。MEX1(1号線)が半島の南北1700kmをつなぐ唯一の舗装国道だ。
スケールのイメージとしては、日本列島の本州に国道4号、1号と2号線をつないだ1本の舗装路があるのみ、と思えば分かりやすいかもしれない。その他は、サボテンの中を走る岩と砂の道だ。
また、最近は補修工事が頻繁に行われるようにはなったが、それでも灼熱の太陽に照らされる舗装路の傷みは早く、いたるところに陥没や穴が見受けられる。さらに、1号線を走っていると「ポイ捨て禁止」の看板があるように、道端に捨てられたゴミを多く見かける。
然るに、バハ・カリフォルニアでは、石やサボテンのトゲ、穴に入ったときのリム打ち、釘や鉄片などによるタイヤのパンクが日常茶飯事なのだ。
バハで最も大きな国境の街、ティファナでは、アメリカから国境を越えてメキシコ側に入った途端、砂と排気ガスの混じった独特のにおいがするというのが日本人観光客の第一印象として多い言葉だ。
アメリカからの中古車も多い、車社会のメキシコは、車検制度もないので、溝のほとんどないタイヤで走行している車ばかり、といっては言いすぎだが、そんな状況もパンクが多い要因だろう。

一般的に、車、バイクで最も多いトラブルはパンクだが、このような路面のコンディションが悪い環境のバハ・カリフォルニアではパンクが多く、当然パンク修理のお店が多い。
街中や国道沿い、あるいは、街はずれの荒野へ向かう未舗装の道沿いに、必ず「LLANTERA」がある。
ラテンアメリカでは、タイヤの事を「LLANTA」(ジャンタ)と呼び、いわゆるタイヤ屋さんを「LLANTERA」(ジャンテーラ)という。大きいお店は、もちろん新品のタイヤも在庫しているが、道路脇の小さいところでは、ほとんどが中古タイヤの在庫のみである。
どちらかというと、タイヤそのものよりも、パンク修理がメインのようだ。タイヤ回りの修理を中心に、小さな整備工場を兼ねているところもある。

毎日多くのお客さんが来るのか?これでよく商売が成り立っているものだと、感心してしまうくらいの値段で修理をしてくれる。日本では自転車のパンク修理さえもできないような安さである。
車の場合、その行程は、先ず、ジャッキアップをしてホイールを外す。そしてタイヤをホイールから剥がし、裏からパッチをあてて修理をする。ホイールに組み戻し、空気を入れて確かめる。そして最後に車体に取り付けて完成だ。
日本では、タイヤの外側からシール材を入れるだけでも、数千円取られる場合があるが、このような完璧な作業をして、日本円でおよそ400円程度である。もちろん、数千円出したら、中古タイヤが買えてしまうからだろうが。
日本人旅行者で、初めてパンク修理をお願いした場合、目の前で丁寧な作業をみせられて、いくら取られるか不安になるが、支払いの時には、聞きまちがえたかと思って必ず聞き返すはずだ。
「えっ?いくら?」「400円でいいの?」って。
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