BAJA 1000で有名なSCOREは、年間5戦のデザートレースを開催している。モーターサイクルのクラスは、そのうちのアメリカ国内で行われる2つの四輪レースを除く、メキシコ バハ・カリフォルニアで開催される3戦でシリーズポイントを争う。San Felipe 250、BAJA 500、そして最終戦のBAJA 1000である。
そのモーターサイクルクラスの開幕戦となるSan Felipe 250の開催地が、コルテス海に面する街、San Felipe(サン・フェリペ)だ。
アメリカ=メキシコ国境から南に約200km、ロサンゼルスを朝に出発すれば、夕方にはホテルのプールサイドでビールを飲みながらくつろぐ事が出来る距離だ。
現在は、送電線も通じ、スポーツフィッシングやマリンアクティビティーのレジャーも楽しめるリゾートとなっているが、幾つかの好条件が重なって出来た街である。

サン・フェリペは、バハ・カリフォルニアの他の街と同じく、イエズス会宣教師達によって開拓されてきた、コルテス海とも呼ばれるカリフォルニア湾に出来た天然の港町となるが、夏には40℃をこすこともある砂漠の中にある。
アメリカ大陸西岸の山脈に遮られ、太平洋からの湿った風は、乾ききった風となって、サン・フェリペを含む盆地状の低い土地、そしてカリフォルニア湾に吹き込む。強烈な陽射しに照らされた大地はさらに乾燥し、カリフォルニア南部からメキシコ北部にかけて広がるソノラ砂漠が形成されている。
そんな厳しい自然環境ではあるが、サン・フェリペの街からわずか数kmのところに地下水脈があり水を確保できたことが街を大きく発展させた。
塩分を含む水なので、現在はいくつかの濾過施設が建設され飲料水を提供している。

また、世界で最も長い半島の1つと言われるバハ・カリフォルニア半島とメキシコ本土との間に出来たカリフォルニア湾は、世界で最も奥行きのある湾の1つであるが、乾燥した大地と対照的な豊かな海の恵みに恵まれている。
細長いカリフォルニア湾の干満の差は大きく、ロッキー山脈に源を発しグランドキャニオンを流れてきたコロラド川が注ぎ込む最深部では、約9メーターもの差が生じるという。サン・フェリペ周辺では、約7メーターほどの差があり、引き潮の時には干潟がひろがる。
特にエビが有名で、浜に面したメインストリートには、いくつものシーフードレストランが軒を連ね、採れたてのシュリンプタコスや、魚介類の料理を食べる事が出来る。
ここ数年で、カリフォルニア湾沿いに南下する道が数十km舗装されてきたが、それまでは、サン・フェリペから南はダートしかない道であった。
半島を縦断する1本の舗装路から分岐した道は、サン・フェリペでコルテス海にぶつかり、行き止まりとなる。
そんな意味も含めて街の入り口には、「コルテス海へのゲートウェイ」と名付けられた、白いアーチ状のモニュメントがそびえている。「m」の様に見えるとも表現される、2つのアーチが重なった形から、ダブルアーチとも言われる。
SCOREシリーズのSan Felipe 250は、まさにこのダブルアーチの下からスタートする。
冒険へのゲートウェイだ。
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