バハあるいは、メキシコをイメージすると、必ず思い浮かぶものに、サボテンが挙げられる。日本人がちょんまげ結って、着物を着て刀を持ってると言う感覚で、メキシコではソンブレロを被ったひげのオジサンが、ポンチョを着てサボテンの前でギターを弾いていると思ってしまうが、ポンチョとギターはともかく、サボテンに関しては、あたっている。実際に普通に見かけるし、10mを越すサボテンは、それだけ強烈でインパクトのある植物なのだ。

サボテンは、アロエなどに代表される多肉植物の仲間であるが、メキシコを中心とする北、南アメリカ大陸が原産である。
英語ではCactus(カクタス)、スペイン語ではCacto(カクト)と言い、「サボテン」は、いわゆる和名だ。辞書を引くと、語源はポルトガル語のSabaoと手が合わさったものあるいは、不明となっている。漢字で書くと「仙人掌」となる。いずれにしても不思議な植物だって感じがする。

日本で見るサボテンは、園芸ショップで見かける小さな鉢に入った可愛らしいミニサボテンやオフィスの観葉植物としてのせいぜい1mほどのものだけだ。大きなものを見たければ、伊豆シャボテン公園にでも行かなければならない。
大別して、柱サボテン、ウチワサボテン、木の葉サボテン、球サボテンに別けられる。そのうちいくつかは食用にもなるが、市場で良く見るのはウチワサボテン(ノパール)で、トゲを削ぎ落として、煮たり焼いたりスープに入れたりする。

バハカリフォルニアでは、いたるところにサボテンが生えている。小さな観賞用になる種類から、食用のウチワサボテン畑、通称「電柱」の10数mの高さにもなる巨大な「サグアロサボテン」(カルドンハシラサボテン)まで実にさまざまな種類を見かける。
最もバハらしいサボテンは、やはりカタビナ周辺に広がるカルドンハシラサボテンの大群落だろう。
サボテンは宇宙と交信しているとか、夜になると動くと言ったうわさがあながち嘘ではないような気がしてくる。
もう一つバハカリフォルニアを代表する植物にシリオツリーという奇妙な植物がある。
メキシコ本土にもわずかにあるものの、この細長いバハ・カリフォルニア半島の北緯29度から30度ほどの間、北はエル・ロザリオから南はゲレロネグロという街の間約500kmでしか大きなコロニーを見ることが出来ない貴重な植物である。世界中でここにしかないのだ。
巨大なカルドンハシラサボテンの林を抜けると、「ごぼう」を逆さまにした様な、ひょろっとしてヒゲだらけで、先っちょに黄色いフサフサがついている別名ブージャムツリーとも呼ばれるシリオツリーの林に移り変わる。
15mにも達する「ごぼう」林の中に入ると、地球外惑星があるとするならば、まさにその異惑星に迷い込んだような感覚だ。

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